目次
アニメ制作の委託取引
アニメ制作の発注方法は、①テレビ局が元請制作会社に直接委託する方式(従来方式)と②関係者が製作委員会を組織し、製作委員会から元請制作会社に発注する方式(製作委員会方式)があり、現在は②の製作委員会方式が主流。
出典 公正取引委員会 2009年 アニメーション産業に関する実態調査報告書(概要)p.1
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h21/jan/090123.files/090123.pdf
出典 みずほ銀行 2014年
http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1048_03_03.pdf
広告収入方式(従来方式)
1990年代までは「広告収入方式」が主流。
「広告収入方式」は、地上波放送局が広告収入を原資とした放映権料を支払い、アニメーション制作会社がテレビアニメ番組を製作する方式。テレビアニメ番組の著作権は、アニメーション制作会社が単独で保有する。また、地上波放送局が製作に関与する場合は、アニメーション制作会社が、地上波放送局と著作権を共同保有する形となる。1990年代までの主流の資金調達手法であり、子供・ファミリー向けの「ドラえもん」、「クレヨンしんちゃん」、「名探偵コナン」、「ONE PIECE」等が代表例。
テレビ局と元請制作会社はパッケージ形式の契約を締結しており、パッケージの中には、①アニメ作品の制作委託契約、②番組の二次利用に関する契約(番組販売権(国内、海外)、ビデオグラム化権、商品化権)が含まれており、さらに、この契約においては二次利用によって得られる利益の配分について取決めを行っているものがある。
製作委員会方式
1990年代後半からは、複数の企業が製作費を出資する「製作委員会方式」が主流。
1990年代後半からは、深夜アニメ番組を中心に「製作委員会方式」が資金調達手法として主流となった。製作委員会が深夜帯の番組放送枠を買い取り、放映後の二次利用収入で製作費を回収する方式であり、製作委員会がテレビアニメ番組の著作権を保有する。
この手法は『風の谷のナウシカ』・『AKIRA』で有名になり、当初は劇場映画製作において多用されてきたが、『新世紀エヴァンゲリオン』における「Project EVA」及び「EVA製作委員会」の商業的な大成功によってテレビ作品にも普及したとされる。
テレビ局が製作委員会を通じてアニメ作品の供給を受ける取引形態としては、テレビ局による製作委員会方式の放映権等の購入という形を採る場合が多い。ただし、完成した番組の放映権を単純に購入するだけではなく、プロデューサー等の制作スタッフを派遣するなど、制作工程に関与することが多く、製作委員会に出資し、製作委員会のメンバーの一員になることも多い。また、放映権等の購入による取引では、テレビ局が購入する放映権には放映回数・有効期限の制限が付くとともに、その有効期限に合わせて、放映権とセットで期限付きの番組販売権や二次利用収益の配分を受ける権利も得るケースが目立つ。したがって、製作委員会方式で制作されたアニメ作品の多くは、受託制作会社にとっては、取引の相手方(発注元)はテレビ局ではなく製作委員会になる。
製作委員会方式のメリット・デメリット
メリット
・資金調達が容易
・リスクの分散・回避
・出資社による宣伝
デメリット
・全体の意思統一が困難
・1社あたりの利益が少ない
製作委員会の名称
製作委員会の名称は「○○製作委員会」が基本であるが、「○○プロジェクト」・「○○パートナーズ」・「○○フィルムパートナーズ」などの名称も多い。
アニメ作品においては『けいおん!』シリーズにおける「桜高軽音部」や『イナズマイレブン』での「FCイナズマイレブン」などのように作品の世界観や劇中で登場する組織にちなんだ名称も多く見られる。
著作権表示における著作権者名は製作委員会への出資額の順に並べられることが多い(原作者(原作の著作権者)/出版社(漫画・小説が原作の場合)/制作局/○○製作委員会など)。
日本国外での製作委員会表記は「○○製作委員会」(production committee)、「○○フィルムパートナーズ」(Film Partners)と表記されることが多い。
制作会社 日本とアメリカ 構造の違い
米国のアニメーション制作会社は、企画・製作を自ら主導し、グループ内またはパートナーとの連携を図りながら、拡大再生産モデル構築を実現している。そのため、十分な製作期間と製作資金を投じたアニメーション製作を行うことができる。
日本のアニメーション制作会社は、製作委員会方式の出資企業の 1 社となるか、製作委員会からアニメーション制作委託を請け負う立場であり、企画・製作を自ら主導することは少ない。また、出資企業の多くは、自社の流通チャネルでの短期回収を目的に出資を行うため、利益を元に次の作品に投資するという拡大再生産モデルが成立しにくい。
http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1048_03_03.pdf p.89
広告収入方式 TV アニメ スポンサーから制作会社までのお金の流れ
スポンサー
↓
5000万円
├───→1000万円 広告代理店
↓
4000万円
├───→1200万円 放送局(キー局)
↓
2800万円
├───→2000万 放送局(地方局)
↓
800万円(制作費)
↓
制作会社(プロダクション)
実際に制作にかかる費用は1000万~1300万円(1話あたり)
出典 経済産業省文化情報関連産業課 2003年
http://www.meti.go.jp/policy/media_contents/downloadfiles/kobetsugenjyokadai/anime200306.pdf